ある夜9時過ぎ、息子が寝室へ向かった。
「パパ、寝るね」
「歯磨きした?」
「したした」
その背中を見送ってから、私はリビングに昨年の確定申告書の写しを引っ張り出した。ふと思い立って控除の欄を一つひとつ確認していたとき——ひとり親控除の欄が空白のままになっていることに気づいた。
「え、申請してなかった?」
一人でそう呟きながらスマートフォンで調べてみると、還付申告は5年以内ならさかのぼって申請できることがわかった。取れるはずだったお金が手元に来ていなかったと知ったとき、正直、力が抜けた。
この記事では、私が実際にe-Taxで還付申告・医療費控除を完了させた3ステップをまとめた。申告し忘れたかもしれないと思っているひとり親の方に、ぜひ読んでほしい。
ひとり親控除とは?年間いくら節税になるのか

ひとり親控除は、2020年の税制改正で新設された所得控除だ。従来の寡婦控除・寡夫控除を統合・拡充したもので、シングルパパ・シングルママの両方が対象になった。
控除額は所得税で35万円、住民税で30万円。課税所得が35万円分減る仕組みで、所得税率20%のラインにいれば所得税だけで年7万円の節税になる計算になる(※所得状況によって異なります)。
主な適用条件はこの3つだ。
- 婚姻していない(または配偶者の生死が不明)
- 生計を一にする子がいる(子の総所得が48万円以下)
- 自分の合計所得が500万円以下
会社員の場合、毎年11月に会社から配布される「扶養控除等(異動)申告書」にひとり親の欄があり、そこに記載すれば年末調整で処理される。申請し忘れた場合は確定申告(還付申告)で取り戻せる。
ステップ1 申請漏れがあるか確認する
最初にやるべきことは、自分がどのパターンに当てはまるかを把握することだ。
パターンA:過去の年末調整でひとり親控除を申請し忘れた
源泉徴収票の「摘要」欄または「寡婦・ひとり親」欄を確認する。記載がなければ申請できていない可能性が高い。過去5年以内の分なら還付申告で取り戻せる。
パターンB:医療費が年間10万円を超えている
医療費控除は年末調整では申請できないため、確定申告が必要だ。ひとり親控除と同時に申請するのがいちばん効率がいい。
パターンC:副業収入や不動産収入がある
確定申告が毎年必要なので、その際にひとり親控除・医療費控除を漏れなく申請する。
私のケースはパターンAとBの組み合わせだった。過去に申請し忘れた年があり、その年は歯科治療費もかかっていたため、両方をまとめて申告することにした。
ステップ2 e-Taxで申告書を作成する(30分の目安)

e-Taxの「確定申告書等作成コーナー」を使えば、税理士に頼まなくても申告書を作れる。事前に以下のものを手元に揃えておくと、作業がスムーズだ。
- マイナンバーカード(e-Tax送信に使う)
- 源泉徴収票(勤務先から毎年1月頃に発行される)
- 医療費の領収書または医療費通知書
- 還付金を受け取る銀行口座番号
手順は次のとおりだ。
- 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、「作成開始」を選ぶ
- 給与所得者の場合は「給与所得がある方」を選択する
- 源泉徴収票を見ながら給与・所得の数字を入力する
- 「所得控除の入力」でひとり親控除にチェックを入れる
- 医療費控除がある場合は同じ画面で入力する
- マイナンバーカードを読み取り、e-Taxで送信する
画面の指示に沿って進めるだけなので、確定申告が初めての人でも迷いにくい設計になっている。私は初回でも30分程度で完了できた。
ステップ3 医療費控除を同時に申請して二度手間をなくす
医療費控除は、1年間の医療費の合計が10万円(または合計所得の5%)を超えた場合に申請できる控除だ。ひとり親控除と同じ確定申告の画面で一緒に申請できるので、どちらかの申請がある年は必ずセットで確認したい。
対象になる医療費は病院の治療費だけではない。
- 病院・歯科・眼科の診察費・治療費
- 処方薬代(市販薬の一部も対象になる場合がある)
- 通院のための交通費(電車・バスは実費。タクシーは原則対象外)
- 子どもの歯科矯正(治療目的の場合)
生計を一にする子どもの医療費も合算できる。私の場合、息子の歯科検診・風邪の受診・私自身の歯科治療を合算したら、思っていたより金額が積み上がっていた。
「これ、結構いくね」
申告書を作っていると、息子がのぞきこんできた。
「そう。毎年ちゃんと申告すれば、少しだけお金が戻ってくるんだよ」
「ふーん、なんかパズルみたい」
その一言が妙に頭に残った。確定申告は義務でもあるけれど、知識があれば使える仕組みでもある。子どもに説明できる言葉で理解しようとすると、自分でも整理できる気がした。
医療費のデータは、e-Taxの「医療費集計フォーム」(Excelファイル)にまとめて一括でアップロードする方法もある。領収書が多い年は、このフォームに年間分を入力しておくと来年以降も楽になる。
※ 確定申告の控除額・手続き内容は個人の所得・家族構成・申告内容によって異なります。不明な点は最寄りの税務署や税理士にご確認ください。最終的な判断はご自身の責任でお願いします。
まとめ
- ひとり親控除は所得税35万円・住民税30万円の所得控除。年末調整での申請漏れは過去5年以内なら還付申告で取り戻せる
- e-Taxの「確定申告書等作成コーナー」は、マイナンバーカードと源泉徴収票があれば30分程度で申告できる
- 医療費控除はひとり親控除と同じ画面で同時に申請できる。子どもの医療費も合算対象になる
- 知らなかっただけで損をしている控除は意外と多い。まずは昨年の源泉徴収票のひとり親欄を確認することから始めよう


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