確定申告は必要?不要?ひとり親控除・医療費控除の落とし穴を解説

会社員シングルパパの確定申告、必要か不要かを分けた3つの条件 お金・資産形成

ある夜、リビングのテーブルに給与明細と確定申告の書類を広げていました。隣で麦茶を飲んでいた息子が、その紙をのぞき込んできました。

「パパ、それ宿題?」
「これは大人の宿題やねん。確定申告の準備」
「めんどくさそう」
「せやねん。でも去年は出さなあかんかったけど、今年は出さんでええ年もあるんよ」
「え、なんで?」

息子のその一言で、毎年なんとなく「ひとり親だから確定申告は必要なはず」と思い込んでいた自分に気づきました。実際は、いくつかの条件に当てはまるかどうかで「必要な人」と「不要な人」がはっきり分かれます。この記事では、確定申告が必要かどうかの判断基準と、知らないと損をする控除、e-Taxで完結させる実践ステップをまとめてお伝えします。

※所得の状況や控除の適用は一人ひとり異なります。ここでお伝えする内容はあくまで目安であり、最終的な確定申告の要否・内容は税務署や税理士に確認のうえ、読者ご自身の判断で行ってください。

確定申告が必要かどうかを分ける3つの条件

結論から言うと、給与所得しかない会社員のひとり親であれば、確定申告が不要なケースも珍しくありません。判断のポイントは、①給与以外の所得が20万円を超えるか、②医療費控除やふるさと納税などで還付を受けられるか、③年末調整だけでは控除が反映しきれていないか、の3つです。この3つのどれにも当てはまらなければ、年末調整だけで完結します。逆に1つでも当てはまれば、確定申告をしたほうが得になる可能性が高いです。

給与以外に副業収入や不動産収入などがあり、年間で20万円を超えていれば、年末調整だけでは完結せず確定申告が必要になります。逆に給与のみの会社員であれば、この条件には当てはまりません。なお、遺族年金は非課税所得のため、確定申告の対象に含める必要はありません。死別か離婚かで受け取る制度が異なり、税務上の扱いも変わるため、収入が増えたからといって身構える必要はない点も覚えておいてください。

知らないと損する、3つの申告パターン

パターン1 ひとり親控除の申請漏れ

ひとり親控除は、2020年の税制改正で新設された所得控除です。従来の寡婦控除・寡夫控除を統合・拡充したもので、シングルパパ・シングルママの両方が対象になります。控除額は所得税で35万円、住民税で30万円。主な適用条件は、婚姻していない(または配偶者の生死が不明)、生計を一にする子がいる(子の総所得が48万円以下)、自分の合計所得が500万円以下の3つです。

会社員の場合、毎年11月に会社から配布される「扶養控除等(異動)申告書」にひとり親の欄があり、そこに記載すれば年末調整で処理されます。ただし、ひとり親になった年や年の途中で状況が変わった年は、会社への書類提出が間に合わず反映されないことがあります。源泉徴収票の「摘要」欄または「寡婦・ひとり親」欄に記載がなければ、申請できていない可能性が高いです。還付申告は5年以内ならさかのぼって申請できるので、思い当たる方は過去の源泉徴収票を確認してみてください。

パターン2 医療費控除の見落とし

医療費控除は年末調整では申請できないため、確定申告が必要です。「10万円を超えないと意味がない」と思われがちですが、実は所得が少ない場合は「所得金額の5%」を超えた分が控除対象になります。ひとり親のように課税所得が低いほど、控除のハードルが下がる仕組みです。具体的には、総所得金額等が200万円未満なら基準は10万円ではなく所得の5%になります。たとえば総所得が150万円なら5%は7万5千円で、医療費が10万円に届かなくても7万5千円を超えていれば控除の対象です。会社員でも収入が変動しやすい年は、一度この基準に当てはまらないか確認してみる価値があります。

もう一つ見落としがちなのが申告できる期間です。医療費控除を含む還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間有効です。3月15日の確定申告期限を過ぎてしまっても、前年やそれ以前の申告をうっかり忘れていても、5年以内であれば申告できます。過去分の領収書が見つからない場合は、マイナポータルと医療保険者の情報を連携していれば通院履歴を医療費通知として確認できるので、探す手間が減ります。

対象になる医療費は、病院・歯科・眼科の診察費や治療費、処方薬代、通院のための交通費(電車・バスは実費)、子どもの歯科矯正(治療目的の場合)などです。生計を一にする子どもの医療費も合算できます。健康保険からの給付金(高額療養費・出産育児一時金など)や生命保険からの補填があった場合は、その分を差し引いて自己負担ベースで計算する必要があります。

私が実践しているのは「領収書BOX」という単純な仕組みです。100円ショップのファイルボックスを冷蔵庫横に置いて、受け取ったその日に入れるだけです。夜、レシートを整理していると、息子が領収書の束をのぞき込んできました。

「これなに、ゴミ?」
「ゴミちゃうで、これがあると税金戻ってくるかもしれへんお守りやねん」
「お守り?ふーん」
「せやろ。捨てたらあかんで」

たかがレシート一枚でも、放っておけば数万円単位の還付を逃すことがあります。地味な作業ですが、家計にとっては小さくない差になります。

パターン3 ふるさと納税が6自治体を超えている

ふるさと納税のワンストップ特例制度は、寄付先が5自治体以内で、かつ確定申告が不要な給与所得者などが申請書を提出した場合に限り使える仕組みです。6自治体以上に寄付すると、全ての自治体に申請書を送っていたとしても特例そのものが無効になり、寄付金控除を受けるには確定申告が必要になります。単なる書類の出し忘れとは違い、期限内に申告をしなければ数万円単位の控除をまるごと失う可能性がある点が、見落としやすいところです。

ある年の12月、ふるさと納税の受領証明書を並べていると、息子が声をかけてきました。

「パパ、なんでそんなに紙広げてるの?」
「ふるさと納税の書類だよ。今年はちょっとやりすぎたかもしれない」
「やりすぎ?」
「6つの自治体に寄付しちゃったんだよね」

数えてみると、寄付先はちょうど6自治体。ワンストップ特例には「寄付先は5自治体まで」というルールがあることを、恥ずかしながらそのとき思い出しました。

平日フルタイムでも15分で終わる、e-Taxの申告ステップ

結論から言うと、スマホとマイナンバーカードさえあれば、税務署に行かず自宅で申告は完結します。3つの控除(ひとり親控除・医療費控除・寄付金控除)は、同じ確定申告書でまとめて申告できます。

  • 事前準備:マイナンバーカードと利用者証明用パスワード(4桁)を確認しておく。うろ覚えのまま始めると入力エラーで止まるため、最初に済ませるのが時短のコツ
  • ステップ1:国税庁「確定申告書等作成コーナー」にスマホでアクセスし、マイナンバーカード方式でログイン。源泉徴収票はカメラ撮影でデータが自動取り込みされる
  • ステップ2:「所得控除」の画面で、ひとり親控除・医療費控除(医療費明細を入力)・寄付金控除(ふるさと納税の証明書を1件ずつ入力)をまとめてチェック・入力する
  • ステップ3:入力内容を確認して送信。書類の印刷も郵送も税務署への来訪も不要。数週間後には還付金が指定口座に振り込まれる

医療費の明細入力は、国税庁のサイトから「医療費集計フォーム」(Excelファイル)をダウンロードして事前に記録しておく方法が便利です。年間通じて少しずつ記入しておけば、申告時の入力作業がほぼゼロになります。私が最初に申告したときの所要時間は約2時間でしたが、2回目以降は15分ほどで終わるようになりました。

送信ボタンを押した後、隣にいた息子に聞かれました。

「終わった?」
「うん、もう送信した」
「はやっ」
「昔は紙に書いて郵便局から送ってたんだけど、今はスマホだけで終わるんだよね」

その一言で、制度が便利になったありがたさをあらためて実感しました。注意点として、スマホの機種によってICチップの読み取り位置が違い、最初の認証でうまく読み込めないことがあります。医療費控除もあわせて申告する場合は、事前に領収書をスマホで撮影しておくと入力がスムーズです。

まとめ

  • 給与以外の所得が年20万円を超えるなら申告が必要
  • ひとり親控除の申請漏れは、過去5年以内なら還付申告で取り戻せる
  • 医療費控除は「10万円」だけでなく「所得の5%」基準もあり、所得が低い年ほど申告のメリットが大きい
  • ふるさと納税が6自治体を超えたら、ワンストップ特例は無効になり確定申告が必須
  • 3つの控除はe-Taxの同じ画面でまとめて申告でき、スマホとマイナンバーカードがあれば自宅で完結する

知らなかっただけで損をしている控除は意外と多いです。まずは昨年の源泉徴収票のひとり親欄と、1年分の領収書を確認することから始めてみてください。※税制や制度の詳細は年度によって変わる場合があります。最終的な申告内容の判断はご自身の責任で行うか、税務署・税理士にご相談ください。


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